今年読んだ一番好きな論文2016というACがありますが、特に登録しているわけではなく、便乗で1本論文を紹介しておこうというだけです。 本当は面白かった論文5選とかを書こうと思っていたのですが、年賀状とかふるさと納税したりで時間がとれない1ので、1本にしました。

紹介するのは、この論文です。

  • Natural Language Generation enhances human decision-making with uncertain information

    Dimitra Gkatzia; Oliver Lemon; Verena Rieser
    pdf

ACLのショートペーパーです。 この論文では、天気予報のような不確実性のある情報に基づいて判断を下す時2、表や図示による情報提示と自然言語による説明、どちらに基づいて判断するとよい判断を下せるのか、という比較をしています。 自然言語による説明は、表や図示のデータから生成していますが、特に新しい手法を提案しているわけではなく、rule-baseの既存手法です。 実験結果では、自然言語による説明の方が効果が高く、両方を用いる場合にかなり近い効果があるとしています。分析の中で、性差の分析などもしていますが、恐らく単純な話ではなく、教育や専門分野などの影響も強く受けているのだと思います。

何故、この論文を選んだかというと、「何故、自然言語処理(今回は生成)に取り組む必要があるか」を示しているからです。 ともするとNLPの世界に身を置いていると、データがあって、それを自然言語で表現する、というタスクは自明に取り組む必要があるように思えてきます。 確かに「人間の知性を再現する」という考えからすれば、人間に出来ている、表や図示されたデータを自然言語で表現する、という行為を再現しようとする研究に取り組む動機は十分にあるように思えます。 しかし、情報提示の手段としては、自然言語だけではなく、表や図示の活用もあるわけです。 Webの世界では、当然のように用いられていますし、人型ロボットでさえ胸にタブレットを置くことで、多様な情報伝達手段を供えています。 この研究は、こういった多様な情報伝達手段がある中で、自然言語が優位になることがあることを示し、今後も自然言語生成に取り組む価値があることを示してくれた点で、「好き」な論文として選ばせてもらいました。

  1. この記事を書いている間も、子供にミルクをあげたり、 絵を描いてあげたりと色々ありました。 

  2. この論文では、「天気予報の情報からアイスクリームの発注量を決める」というタスクを対象にしています。